司法書士は、司法書士法施行規則第31条に基づき、「任意の相続財産管理人」、「遺言執行者」、「成年後見人」等の地位に就き、皆さまの大切な財産の管理をすることができます。財産の管理とは、具体的にいうと、不動産の管理や処分、預貯金の入出金などです。
また、司法書士は、『成年後見制度』ができた当初から積極的に成年後見業務に取り組んできましたので、法定後見における親族以外の成年後見人等として家庭裁判所にもっとも多く選任されています。また、将来の判断能力の低下に備えた任意後見契約書や信託契約書の作成など、皆さまが将来の不安を払拭したいとお考えであれば、いつでもご相談いただけます。
私たちは、高齢者や障がい者の財産を適切に管理するお手伝いをすることをお約束いたします。
※『成年後見制度』とは、認知機能の衰えた方や精神障がい、知的障がいなどにより判断能力が不十分な方々が、人間としての尊厳を保ちながら、地域で安心して暮らせるように、成年後見人等が財産管理や介護、福祉に関する手続を代わりに行うなどして、法律面や生活面で支援する制度です。
財産管理に関するサポート
主な相談事例Q&A
ご相談者に意思能力がある場合は、①任意代理契約(財産管理等委任契約)、②任意後見契約、③民事信託契約(家族信託契約)の3つの方法があります。
このうち、②の任意後見契約は、ご本人が意思能力を有しているときに自ら選んだ受任者との間で契約を締結し、将来の生活、療養看護及び財産管理に関する事務をあらかじめ委託し代理権を付与しておく制度です。通常は、①の任意代理契約とセットで締結します(移行型)。
将来、本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が後見監督人を選任したときから効力が発生し、受任者が任意後見人として財産管理及び身上保護の事務を行います。
ただし、任意後見人には、法定後見人等と異なり、契約の取消権がありません。
また、任意後見契約の効力が発生していない段階では、受任者がその権限を対外的に主張する場合に困難が生じることがあります。例えば、契約書の中に銀行取引に関する代理権授与が規定されていても、銀行等によってはこれを認めず、あらかじめ本人同行の下で代理人の届出をすることが必要となる場合があります。
次に、③の民事信託契約とは、ご本人(=委託者)が自分の所有する特定の財産を、信頼できる人(=受託者)にその管理を託して名義を移し、受託者がその財産を一定の目的に従って管理運用処分し、その中で託された財産や運用益を特定の人(=受益者)に給付したり、財産そのものを引き渡したりして、その目的(認知症対策や相続対策のことが多いです)を達成する信託行為の中の一つです。こちらも契約ですのでご本人が意思能力を有することが前提です。
通常は、委託者=受益者であることが一般的で、信託財産の所有権は受託者に移転しますが、その財産から得られる利益は従前どおり、ご本人が得ることができます。この財産の管理者と財産の受益者を分けることができるのが民事信託契約の大きな特徴です。
最近は、②の任意後見契約とセットで締結する『福祉型信託』が主流で、高齢者や障がいを持つ方の生活等の支援のために活用されています(ただし、任意後見人と受託者は利益が相反する関係にあるという説が有力ですので、別々の方を選任した方がいいかもしれません)。
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする(民法第3条の2)。
意思能力は、行為の結果を判断するに足りるだけの精神能力のことです。例えば、認知症を患って行為の結果を判断することができない人は、意思能力を有しないことになります。
したがって、成年後見人等の審判を家庭裁判所に申し立てたうえで、居住用不動産の処分の許可を得る必要があります。なお、家庭裁判所の許可のない処分は無効と解されています。
既に判断能力が不十分と判断される場合は、法定後見制度を利用するしかありません。判断能力の程度に応じて『後見』、『保佐』、『補助』の三つの類型があり、主治医の判断に応じてそれぞれの法定代理人(成年後見人、保佐人、補助人)の選任申し立てを家庭裁判所に申し立てる必要があります。
ただし、保佐人、補助人が遺産分割協議に加わるには、その旨の代理兼を付与してもらう審判を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
なお、この場合、遺産分割協議においては当該相続人の相続分がないとする結果はほぼ認められず、少なくとも法定相続分を取得する結果が必要です。
継続的見守り契約を締結することが有用です。
今現在は自分で何でもできるけれど、将来が不安なので、定期的に面談をしたり、電話連絡を取ったりすることで生活の状況や健康状態を確認し、あなたを見守ることができます。
あなたを代理して契約などは結びませんが、気軽な相談相手として、常に繋がっている安心感を得ることができます。
人が亡くなったときは、行政官庁への諸届出、水道光熱費関係の契約の解約、葬儀・埋葬等の準備、菩提寺への連絡、親戚や友人への通知、医療費の支払、遺品の整理など、実に多くの事務があります。
同居の家族がいる場合には、家族がこれらの事務処理を行うので、あまり不都合は生じないのですが、おひとりで生活されている高齢者などは困ることが多いと思います。
このような場合は、死後事務委任契約を締結する方法があります。任意後見契約は本人が死亡するとその時点で終了しますので、通常は併せて死後事務委任契約を締結します。
死後事務委任契約でできることは、主に(1)葬送に関する事務、(2)医療費や施設利用料などの支払いに関する事務、(3)行政機関への届出事務などです。
ただし、預貯金の払戻しや不動産の売却などは死後事務受任者の立場ではできません。詳しくは、「死後事務受任者ができる手続・できない手続」をご覧ください。
高齢者は「健康」、「お金」、「孤独」の3つの大きな不安を持っているといわれています。悪質業者は言葉巧みにこれらの不安に付け込み、優しい言葉をかけて信用させ、寂しさや人の好さに乗じてお金を支払わせたり、時には強引な言動を用いて被害を与えたりする例が多くみられます。
最近では、高齢者のみの独居世帯が増加しているため、訪問販売や電話勧誘販売による被害にあいやすいのも特徴です。また、悪質業者が頻繁に出入りしていても気付かれにくく、被害が表に出にくい状況になっています。
これらの被害を事前に防止するには、まず、関係機関と連携して、異変に気付きやすい環境を整えることが必要です。要介護認定が受けられれば、ヘルパーさんが訪問することにより大量の不要な購入品や不審な契約書や領収書が発見されることで早期に被害に気付くことができます。また、民生委員の方や近隣に住む親族に定期的な訪問をお願いし、人の出入りが頻繁になればそれだけで被害防止につながります。
もし、ご本人に判断能力の衰えがみられる場合は、法定後見制度を利用するのも有用です。
後見等を申し立てることで、ご本人が締結してしまった不要な契約を問答無用で取り消すことができるようになります(ただし、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については取り消すことができません)。
後見等のレベルまで判断能力が低下していなければ、任意代理契約(財産管理等委任契約)や民事信託契約等を締結し、法律専門家やご親族が財産を管理することで、ご本人が軽々に資産を動かせないようにしておくことも有用です。特に、民事信託契約を結ぶことによって、ご本人が詐欺被害に遭ったとしても、ご本人には既に預金や不動産等の処分権がないため、意図せず財産を費消してしまうリスクがないといえます。
ただし、任意代理人や受託者に契約の同意権・取消権はありませんので注意が必要です。