裁判書類作成関係業務に関するサポート

司法書士は、裁判所に提出する書類等の作成及びその相談を業とすることができます(司書§3-1④・⑤)。したがって、およそ裁判所に提出する書類等であれば、民事訴訟のほか執行、倒産、家事、人事等あらゆる事件についての作成権限が認められ、作成できる書類等の種類についても特に制限はありません。
司法書士の裁判書類作成関係業務は、本人訴訟を支える制度として位置づけられますので、あくまでも訴訟遂行者であるご本人の言い分を正確に聴き取って、適切な法的判断を加え、法的に完備した書面を作成することが中核になります。
「ネットオークションで買った商品が届かない」、「友人に貸したお金を返してもらえない」、「アパートの敷金が返ってこない」、「訪問販売で契約した商品を解約したい」など、日常生活にはさまざまなトラブルが潜んでいます。そんな日常生活のトラブルに巻き込まれたときは、あなたと『二人三脚』となって問題解決をめざします。

裁判書類作成関係業務に関するサポート

主な相談事例Q&A

民事上の紛争を解決する手段を知りたい

詳しくは、「各紛争解決手続の特徴とメリット・デメリット」をご覧ください。

訪問販売で購入した商品の売買契約を解除したい

特定商取引に関する法律では、訪問販売等で購入した商品の売買契約を法で定められた申込書面又は契約書面を受け取ってから一定の期間であれば、無条件で解除ができると定められています。これをクーリング・オフ制度といいます。
消費者が訪問販売などの不意打ち的な取引で契約した場合は申込書面または契約書面を受領した日から8日以内、マルチ商法(連鎖販売取引)などの複雑でリスクが高い取引で契約した場合は20日以内であれば理由を問わず、一方的に契約を解除できます。
消費者は、商品を使用していてもそのまま返品できます(ただし、例えば使うと商品価値がほとんどなくなる、いわゆる消耗品〈健康食品、化粧品等〉を使ってしまった場合等は、クーリング・オフができません)。事業者は、クーリング・オフに伴う損害賠償または違約金の支払いを請求することはできませんし、商品の引取りに要する費用(送料)は事業者負担となります。
クーリング・オフができる期間は取引類型に従い次のように定められています。

8日間「訪問販売(キャッチセールスなども対象)」
「電話勧誘販売」
「特定継続的役務提供(エステ、語学教室など)」
20日間「連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法の1つ)」
「業務提供誘引販売取引(いわゆる内職商法の1つ)」
*「通信販売」には、クーリング・オフの制度はありません。必ず返品特約の有無を確認してください。

クーリング・オフは、契約書面を受け取った日から数えます(初日算入)。例えば、水曜日に契約書面を受け取った、翌週の水曜日まで相手方に通知を発送すればいいことになります(発信主義)。相手方に対する通知は書面で行う必要がありますが、後日紛争になったときのために、内容証明郵便など確定日付のあるものを利用するとよいでしょう。
もし、上記の期間が過ぎていたとしても諦める必要はありません。業者が交付すべき「法で定められた申込書面又は契約書面(法定書面)」に記載すべき事項は、法律や省令に詳細な決まりがおかれています。一見問題のない書面に見えても、記載事項に不備があることもあります。不備がある場合は、クーリング・オフの期間は進行しません。
また、クーリング・オフ期間を過ぎてしまっても訪問販売や電話勧誘販売であれば「過量販売解除」、連鎖販売取引や特定継続的役務提供であれば「中途解約」を検討してみましょう。訪問販売等の場合で、勧誘の際、事実と異なることを告げられた又は重要な事実を故意に言われなかった場合は、その証拠が明確に残っている場合は契約の取消権を行使することも考えられます。


友人にお金を貸したのですが、すべて口約束で、借用書などの書面は何もありません

金銭の貸し借りについての契約(金銭消費貸借契約)は、書面を作成していなくても口約束で成立します。
ただし、裁判で貸金返還請求をする場合には、金銭の返済を約束したことや金銭を渡したことを証明する必要があります。契約書や借用書などの書面があり、相手方の署名・捺印があれば、この証明は比較的容易ですが、書面がない場合、間接的な証拠(通帳の記録、メールやショートメッセージ等でのやりとり、相手方との会話の録音等)から貸し借りの存在を証明していくことになり、書面での立証に比べてハードルが高くなります。
借主が貸金を返還しない又は契約そのものを否定するなどの問題が生じた場合には、契約書や借用書は有力な証拠となりますので、金銭の貸し借りを行う際には、友人であろうとも書面を残しておくのが賢明でしょう。

隣の土地の所有者との間で、境界について揉めています

境界には2つの意味があります。1つは「筆界(公法上の境界)」、もう1つは「所有権界(私法上の境界)」です。
筆界とは、所有権とは無関係の公的な地番と地番との境界線のことです。したがって、当事者の合意によって境界を変更処分することはできず、当事者が境界について合意しても、その内容どおりの境界を確定することは許されません。
この「筆界(公法上の境界)」に争いがある場合、まず、その解決方法としては法務局の筆界特定制度があります。筆界特定制度とは土地の所有者等の申請に基づいて筆界特定登記官が現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。ただし、筆界特定制度は、新たに境界を決める手続きではなく、あくまで筆界特定登記官の認定判断を表示する行為に留まりますので、その判断に法的な不可争力は付与されていません。この判断に不服がある場合には、裁判所に境界確定訴訟を提起することになります。
境界確定訴訟の審理・裁判については、次のような特色がみられます。
①処分権主義・弁論主義に制限が加えられ、裁判所は当事者の主張する境界線に拘束されることなく境界線を定めることができる。
②控訴審の審判について不利益変更禁止の原則は適用されない。
③裁判所は、証拠調べの結果によって特定の境界線を認定することができない場合であっても、請求を棄却することが許されず、裁量により境界線を定めなければならない。
④境界確定訴訟において、被告が主張する取得時効の抗弁の成否は、境界確定とは無関係である。すなわち、土地の一部を時効によって取得したとしても、これにより土地の境界が移動するものではない。
一方、「所有権界(私法上の境界)」は、土地の所有権の範囲の問題であり、隣接する土地の所有権の境目を意味します。土地所有権の範囲をどこまでにするかは、当事者間の合意によって決めることができます。その場合は、「筆界(公法上の境界)」と所有権の範囲は一致しないことになります。
この「所有権界(私法上の境界)」に争いがある場合、境界確定訴訟ではなく所有権確認訴訟など別の訴訟類型による必要があります。

アパートを退去した時に敷金が殆ど返ってきませんでした

敷金は、賃貸借契約から生じる借主の貸主への債務(未払い賃料や原状回復費用など)の担保として事前に貸主に預けておく金銭のことで、部屋を明け渡す際にその債務を控除して、なお残額があれば、その残額の返還を請求することができます。未払い家賃等の担保となるべきものですから、貸主への債務がない場合は全額返還されることになります。
ところで、借主は、賃貸物件を原状に回復して貸主に返還する義務を負いますので、借主が負担すべき原状回復に必要な費用は、敷金から差し引かれることになります。
ただし、「借りたときの状態」にまで戻す必要はなく、経年変化など賃貸物件の通常の使用及び収益によって生じた損耗(通常損耗)については、そのままの状態で返還することで足ります。通常損耗を超える部分、つまり、故意に損傷させたなど明らかに借主に責任があるような部分については、修繕して返還する必要があります。
例えば、普通に賃貸物件を使用していれば、畳が日焼けしたり、壁紙に黄ばみが出てくるものです。次の賃借人のために畳や壁紙を新しくする費用を敷金から差し引くことは認められません。ただし、喫煙等によりクロス等がヤニで変色したことによる張り替え費用や、借主が掃除をしていなかったために発生したカビやシミなどの除去費用は、借主に責任がありますので、その部分での修理費用は支払う必要があるでしょう。
ところで、賃貸借契約については、強行法規に反しないものであれば、特約を設けることは契約自由の原則から認められています。この特約の中には、経年変化や通常損耗に対する修繕義務等を賃借人に負担させる特約や、敷金返還の際に一定額または一定割合を必ず差し引くこととする敷引特約などもあります。これも一応有効な契約内容ではありますが、借主にとってあまりにも不利なものであれば、消費者契約法10条に基づき無効となる可能性もあります。
原状回復義務の範囲については、国土交通省から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という一般的な基準が公表されています。これを参考にして、通常使用による損耗の修繕費用については、支払う必要がないことを貸主に伝えてみてください。話し合いで解決できないようであれば、調停や訴訟などの裁判手続きをとることができます。

会社の債権者は取締役等の個人責任を追及できますか?

会社の債権者は、会社から債権回収ができない場合、役員個人に対する責任追及は、原則としてできません。
会社の所有者である株主への責任追及もできません(株主有限責任)。
会社債権者に対する責任は、会社が負います。
しかし、多額の買掛金がある会社が倒産したら、会社に対する債権は、破産債権で紙くず同然です。
一方で、会社を実際に動かしてきた役員は豪邸に住んでいます。この場合に、この豪邸を差し押さえられないでしょうか?
そこで、会社法429条1項は次のように定めています。
「役員等(取締役、監査役、会計参与、執行役または会計監査人)がその職務を行うについて、悪意または重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者(主に会社債権者)に生じた損害を賠償する責任を負う。」
この役員等の責任は、民法709条の不法行為とは別に法定された特別の責任です。
役員等が、直接の自己の行為によって第三者に損害を与えたのであれば別ですが、会社の職務に熱心でなく、単に任務をさぼっていたというだけでは損害発生への直接の責任はないから民事上の責任は生じません。しかし、会社法は、こうした間接責任についても、「悪意または重大な過失」を要件として、第三者による責任追及を認めているのです。

将来、養育費の未払いに備えて公正証書を作成しようと考えていますが、何か注意点はありますか?

公正証書を、裁判の確定判決などと同様に、債務名義として強制執行するには、次の要件が必要です。
① 金銭の一定の額の支払(又はその他の代替物や有価証券の一定の数量の給付)を目的とする請求についての公正証書であること。
② 債務者・連帯保証人等が債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服するとの陳述(強制執行認諾文言)があること。
さらに、裁判所に強制執行の申立てをする前に、公証役場で「送達証明書」の交付と「執行文の付与」を受ける必要があります。
「送達証明書」とは、公正証書正本又は謄本が強制執行を受ける相手方に届いていることを証明する文書のことです。
公証役場に対して「送達証明書」の交付を受ける方法としては、『郵便送達』と『交付送達』の2つの方法があります。
『郵便送達』は、債務者等に対し、公証人が公正証書正本又は謄本等を郵送で送付する方法です。
一方、『交付送達』とは、公正証書作成の際に債務者等が公証役場に出頭した際に、公証人がその場で公正証書正本又は謄本等を直接手渡す方法です。
一般的に、債務者等は公正証書の作成には素直に応じることも多いのですが、弁済期を経過して支払いの督促を受ける頃になると、一転して開き直ってみたり、いろいろ自分勝手な言い分で請求の回避を画策するものです。
将来、不払いになってから公正証書を送達しようにも、債務者等が受取りを拒否したり、行方不明になったりすることもありえますので、『郵便送達』の方法で送達証明書を取得しようとしても、これが困難になることが少なくありません。
そこで、このような困難を回避するためにも、公正証書を作成したときは、その場で送達申請をして『交付送達』の方法で送達証明書を取得しておくべきです。
ただし、『交付送達』の方法は、当日に債務者等が同席する場合に限り可能ですのでご注意ください。