7 自筆証書遺言の作成方法
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立します。したがって、「全文の自書」「日付」「氏名」「押印」が自筆証書遺言の成立要件になります。
これから、それぞれの注意事項についてご説明いたしますが、ここでは、法務省の自筆証書遺言保管制度を利用する前提でお話をさせていただきますのでご了承ください。
(1)全文の自書
①自書とは、遺言者が自らの手で筆記することをいいます。他人の補助(添え手)を受けて書いた遺言書は、無効になります。
②タイプライター、ワープロ、パソコンの文書作成ソフト(ワード、一太郎など)を使用して作成した遺言書は、「自書」の要件を満たさず、無効になります。ただし、カーボン紙を用いて複写の方法で記載した遺言書は「自書」の要件を満たします。
③財産目録については、法律の改正により、自書の要件は不要になりました。したがって、目録については、パソコンの文書作成ソフト(ワード、一太郎等)などを使用して作成しても問題ありません。ただし、目録の毎葉ごとに署名と押印が必要になります。
(2)日付
①日付は、年月日によって表示します。年月の記載はあるが日の記載がない遺言書は無効であり、「昭和47年7月吉日」と記載された遺言書も、日付の記載を欠くものとして無効になります。
②日付も自書が必要であり、日付スタンプなどを用いることはできません。
③日付は、遺言書本文と同一の書面に記載しておくことが適切であり、遺言書を封入する封筒に記載した場合、無効になる可能性があります。
(3)氏名
①氏名は、姓と名前とを併記することが原則です。
②遺言者との同一性が示される限りにおいて、通称、雅号、ペンネーム、芸名、屋号などでも有効とされています。
③氏名も自書が必要であり、ネームスタンプなどを用いることはできません。
(4)押印
①押印のない遺言書は無効になります。
②印鑑は認印でよく、また、指印をもって足りるとされています。しかし、遺言者の死後、本人の意思に基づくものか否かの争いが生ずることを防ぐためにも、可能な限り実印を押捺することをお勧めします。
③押印の場所に制限はありませんが、紛争を防ぐためにも、遺言者の署名に続けて押捺することが適切です。
(5)その他
①用紙の大きさはA4を使用してください。A4サイズであれば、便箋でもレポート用紙でも構いません。また、左を2cm以上、下に1cm以上、上と右に0.5cm以上の余白をとるように記載してください。
②遺言書が数枚にわたる場合でも、ホチキスなどで綴じないでください。数枚にわたる場合は、用紙下部に1/2、2/2のようにページ番号を記載してください。なお、遺言書が1枚の場合でも、1/1のような振り合いで記載するのが望ましいとされています。
③遺言書の作成後は、封筒などには入れずに、クリアファイル等に入れて、なるべく折り目がつかないように保管しておいてください。
④標題に制限はなく、「遺言」、「遺言書」あるいは「遺書」でも問題ありません。
⑤遺言書に用いる言語についても制限はなく、外国語や速記記号、あるいは何らかの略符・略号が用いられていても遺言者の意思が明確に判断される限り有効です。
(6)加除・変更の方式
民法が定める自筆証書遺言の加除・変更は、厳格に定められています。すなわち、遺言者が変更する場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名し、かつ、その場所に押印しなければ、その効力が生じないことになっています。以下、注意事項を申し上げます。
①原文の一部を削除する場合には、削除する部分に二重線を引いて、削除箇所を明示します。加筆する場合には、「 { 」などの記号で加筆すべき場所を明示して加筆内容を記載します。
②削除、加筆した箇所には押印します。使用する印鑑については、遺言書本文に押捺される印鑑と同一のものを使用してください。
③さらに、削除・加筆箇所の余白または遺言書の末尾に「第5行中〇字削除、〇字加入」の振り合いで、削除加筆内容を付記して、そこに署名します。加筆が長文になる場合は、遺言書の末尾に「本遺言書本文第5行目に『……』の〇字を追加した」などの表現で付記・署名します。
さて、これまで、ひととおり遺言に関する基礎知識を網羅したつもりですが、いかがでしたでしょうか?もし、不足があれば、随時補足していくつもりでいますので、よろしくお願いいたします。
弊所では、ヒアリングシートなどを活用して、お客さまのご要望を懇切丁寧に聴き取り、法的に不備のない遺言書を作成してまいります。ご依頼を心待ちにしております。
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