遺言書を書いてみませんか?(第4回)

 第4回目となる今回は、遺言書の種類についてご説明させていただきます。

4 遺言書の種類

(1)自筆証書遺言と公正証書遺言

 遺言書には、大きく分けて、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つの方式があります。他にも、秘密証書遺言による方式がありますが、ほとんど利用されていませんので、事実上、遺言書を作成するには、以上の2つの方式から選択していただくことになります。どちらの方式で作成すればいいのか、まずは、以下の比較表をご覧ください。

(2)それぞれのメリット・デメリット

◎作成手順

公正証書遺言自筆証書遺言
事前に遺言書の草案を公証役場に伝えます。作成当日に、証人2人以上の立会いのもと、公証人の面前で草案の内容を再確認した後、公証人が遺言書の原本を作成します。A4サイズの用紙に、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに押印します。その後、遺言者の住所地等を管轄する法務局に赴き、遺言書の原本を保管するよう申請します。

◎メリット

公正証書遺言自筆証書遺言
・公証人が関与するため、様式や内容の不備により無効となったり、その解釈に疑義が生じて後に紛争となったりするリスクが少ない。
・遺言書の原本は公証役場で保管されるため、紛失・隠匿・変造の心配がない。
・全国の公証役場で遺言の存否を検索することができ、遺言の存在が知られないままに終わる危険を減らすことができる。
・遺言書の正本を失くしてしまっても、公証役場からの再交付が可能。
・いつでもどこでも、紙と筆記用具と印鑑さえ用意すれば、自分で作成できる。
・肉筆の文面に重みがあり、心情に訴えかける説得力がある。
・財産目録については、ワープロ等で作成でき、自書は不要。
・証人を用意する必要がなく、公証人の手数料等もかからない。
・一部を除く全国の法務局で遺言書が保管されているかどうかを調べることができ、遺言の存在が知られないままに終わる危険を減らすことができる。

◎デメリット

公正証書遺言自筆証書遺言
・作成費用として、公証役場所定の手数料がかかる。
・作成までに公証人との打合せが必要であり、手続の手軽さに欠ける。
・証人を2人揃える必要がある。
・遺言の存在と内容が秘密にできない
・保管費用として、一定の手数料(3,900円)がかかる。
・自筆証書遺言の要件が満たされていなかったり、記載内容が不明確などの理由で、遺言書が無効になってしまうリスクがある。
・原則として、全文自書が要件なので、誤字脱字が含まないよう書くには、かなりの労力が要る。
・遺言書を訂正する方式が厳格に定められている。

*比較表の自筆証書遺言のそれぞれの内容は、令和2年7月10日から始まった自筆証書遺言書保管制度を利用する前提で記載しています。この制度を利用する・しないは自由ですが、利用しない場合、①遺言書の紛失・隠匿・変造のおそれがある、②家庭裁判所で一定の手続きを経る必要がある、などのデメリットが増えます。

 いかがでしたか?この比較表を見ても、どちらの方式にも一長一短があり、簡単には決められないと思いますが、遺言事項が複雑多岐にわたるような内容でない限りは、どちらを選択しても構いません。

 以前は、遺言で贈る財産の中に金融機関の預貯金や有価証券が入っていれば、迷わず、公正証書遺言をお勧めしていましたが、自筆証書遺言書保管制度が開始されてからは、お客さまのご意向を最優先にして選択してもらうようにしています。ただし、自筆することが難しい、あるいは、法務局へ出頭することが難しいのであれば、自筆証書遺言書保管制度の利用は難しいでしょう。

➡次回(第5回)は、「遺言できる事項について」です。