相続は誰もが経験する可能性がある場面です。私も身内を亡くした経験がありますが、身内を亡くした喪失感が癒えぬなか、煩雑な相続手続に追われるのはとても辛いものです。ましてや、「遺言書が見つかった」、「故人が多額の借金を残して亡くなった」、「相続人の中に未成年者や行方不明者がいる」など、簡単なケースばかりではありません。
司法書士は、相続があったときの一番最初の相談相手として最も適しているのではないかと思います。私たちは、大切な人を喪った悲しみに打ち拉がれるあなたに代わって、亡くなられた方の大切な財産を責任をもって次の世代へつなげていきます。
また、将来の相続争いを避けるために、遺言書の作成や生前贈与の活用、信託契約の締結などが有効なこともあります。あなたの大切な人を護るために、最適な相続対策をご提案し、将来の不安要素を取り除きます。
相続・相続対策に関するサポート
主な相談事例Q&A
民法に相続人となることができる人の範囲が定められています。これを法定相続人といいます。
法定相続人は、配偶者、被相続人の直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹です。このうち、配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の相続人には順位がついていて、先順位の者が相続人となります。
第1順位は被相続人の直系卑属です。非嫡出子も嫡出子と同様の相続権があります。また、養子も実子と同様に相続人になります。子が既に死亡しているときは、その代襲者(子、孫等)が相続人となります。
第2順位は被相続人の直系尊属(被相続人の親)です。親が既に死亡していて、祖父母が生存しているときは、祖父母が相続人になります。
第3順位は被相続人の兄弟姉妹です。兄弟姉妹が死亡しているときは、その代襲者(子のみに限られ、孫等は含まれません)が相続人となります。
各自の相続分についても民法に定められています。これを法定相続分といいます。
例えば、配偶者と子が相続人の場合は、配偶者が2分の1、子が2分の1です。子が複数いれば、2分の1を均等に分けることになります。
配偶者と直系尊属が相続人の場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者が4分の3、直系尊属が4分の1です。
まずは、本籍地が記載されている故人(被相続人)の住民票(除票)を取得してみましょう。その本籍地を手がかりに戸籍をさかのぼって、相続人を確定します。
次に、故人にどのような相続財産(遺産)があるかを調べます。調査の方法としては、不動産であれば登記事項証明書や権利証、固定資産税の納税通知書などを確認してみましょう。預貯金であれば、通常は取引銀行の通帳やキャッシュカードが残っていると考えられますが、見当たらない場合は、故人の生活圏内にある金融機関に対して被相続人の預貯金契約の存否を確認してみましょう。
重要なのは、相続財産の中に債務(借金)があるかどうかです。これにより、後の手続に関して大きな影響を与えますので、早急かつ綿密に行う必要があります。調査するためには、信用情報機関への開示請求を行うのがよいでしょう。
相続財産の詳しい調査方法については、「どんな相続財産があるかわからないときは」を参考にしてください。
自分の死後に財産を承継させる法形式には、遺言以外にも、「死因贈与」や「負担付遺贈」、遺言を利用した「遺言信託」と契約による「遺言代用信託」などがあります。
「死因贈与」とは、贈与者の死亡を不確定期限として効力が発生する贈与のことです。死因贈与についての詳細は、「死因贈与契約は公正証書で作成するのがオススメです」、「死因贈与契約による登記手続について」をご覧ください。
「負担付遺贈」とは、受遺者に対し、一定の法律上の義務を課した遺贈です。受遺者は受ける利益の範囲内で負担した義務を履行する責任を負います。なお、受遺者が義務を履行しないときは、負担の不履行を理由として、相続人に取消権が認められています(民1027条)。
「遺言信託」は、遺言により信託を設定し、遺言者の死亡によりその効力が生じる信託行為のうちの一つです。遺言者の死亡時点の財産全てを信託財産に入れられるというメリットがある一方で、老後の財産管理、認知症発症後の財産管理としての機能がないため、あまり利用されていないようです。
「遺言代用信託」は、契約により信託が成立し、委託者の死亡により受託者が遺族などの帰属権利者に信託財産の利益の給付をする生前処分です。信託契約は、特定の財産に対する管理処分ですので、死後の財産処分を包括的に網羅するためには、別途遺言書の作成も併せて行うといいかもしれません。
相続対策には、「相続人間の紛争を事前に防ぐことを目的とした対策」と「相続税対策」に大きく分かれます。「相続税対策」には、主に(1)節税対策と(2)納税資金対策があります。このうち、(1)の節税対策の概要のみご紹介します。
①生前贈与の活用
生前贈与は節税対策の中心になります。暦年課税の基礎控除110万円の活用、相続時精算課税制度の活用、住宅取得等資金の贈与税の特例、贈与税の配偶者控除の特例などにより相続財産を減少することができ、相続税を軽減することができます。ただし、基礎控除110万円の活用については、2023年度の税制改正により、生前贈与した額を相続財産に加える対象期間が死亡前3年から7年に延びたので注意してください。
②財産の評価額の引下げ
財産の保有の仕方を工夫すること等によって、財産の評価額を引き下げることができ、相続税を軽減することができます。中心となるのは、不動産と現金・預貯金の評価額の差を利用した評価額の引下げ、生命保険の活用などになります。
この他、養子縁組の活用、法人の設立等によっても相続税の負担を軽くすることが可能です。
なお、事前の対策ではありませんが、遺産分割時の分割方法の工夫(例えば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の利用など)によっても相続税額は大きく変動します。
相続税対策の詳細は、相続税専門の税理士さんにご相談なさってください。
相続人の中に行方不明者がいる場合、主に2つの選択肢があります。ひとつは、行方不明者のために家庭裁判所に対して「不在者財産管理人の選任の申立て」をすること。もうひとつは、行方不明者が失踪してから7年以上経っている場合(普通失踪)は、家庭裁判所に対して「失踪宣告の申立て」をすることです。
どちらも、主に相続手続を行うために利用されますが、遺産分割協議を行いたい場合は、まず不在者財産管理人選任の申立てをすることが多いです。失踪宣告の申立ては、申立てから審判確定まで1年程度掛かるといわれていますし、不在者は死亡したものとみなされるため、親族の心情として申立てに踏み切れないということもあります。
不在者財産管理人選任の申立ては、不在者の従来の住所地等を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立てができる人は、利害関係人(不在者の相続人、債権者など)と検察官です。
不在者財産管理人選任の申立てをする場合の注意点は以下のとおりです。
①不在者財産管理人が不在者の代わりに遺産分割協議を行うには、家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要がある
②遺産分割協議を行った場合、不在者財産管理人は不在者の法定相続分を確保することが原則となる
③申立ての際に、不在者財産管理人候補者名を記載することができるが、必ずしも裁判所がこれに拘束されるわけではない
④遺産分割協議が終わったとしても、不在者財産管理人の職務は終了するとは限られない
③についてですが、不在者財産管理人に特別な資格は要りません。ですので、申立人の親族(相続人ではない親族)を候補者にすることも可能です。相続財産管理人に比べ、不在者財産管理人の場合は候補者を選任している傾向が多いようです。しかし、弁護士などの資格者以外は選任しない地域もあります。親族候補者以外の資格者が選任された場合、資格者の報酬等(予納金)が必要になります。また、④についてですが、不在者財産管理人の職務は主に次の場合に終了します。言い換えれば、それまでは職務が続くということでもあります。
(ⅰ)不在者が現れたとき
(ⅱ)不在者に失踪宣告がされたとき
(ⅲ)不在者が死亡したことが確認されたとき
(ⅳ)不在者の財産がなくなったとき
(ⅰ)の場合には、不在者であった者に、(ⅱ) (ⅲ)の場合には、不在者の相続人に、財産を引き継ぐことになります。したがって、実務上、不在者が死亡していると思われる場合で失踪宣告の要件を満たしていれば、利害関係人として失踪宣告の申立てをする場合も多いようです。
また、②に関連する点ですが、不在者に遺産の取得分が全くない遺産分割協議の場合、原則として家庭裁判所は認めません。ただし、「帰来時弁済型」と呼ばれる遺産分割協議があり、これは、もし不在者が帰来した場合に他の共同相続人が不在者に代償金を支払うという型の遺産分割協議のことです。帰来時弁済型の遺産分割協議が認められるのであれば、不在者が財産を取得したわけではないので、不在者財産管理人の職務は基本的に終了することになります。
保険契約者(被相続人)がご自身を被保険者として契約した生命保険金請求権が相続財産に含まれるかについては、保険契約において、受取人をどのように定めているかによって決まることになります。
①受取人を特定の相続人と定めている場合は、受取人が保険金支払請求権を取得することになりますので、遺産分割の対象となりません。
②受取人を指定しなかった場合、保険約款において「被保険者の相続人に支払います」との定めがあるときは、法定相続分の割合に応じて各相続人が取得することになりますので、遺産分割の対象となりません。
③保険契約者が被保険者及び受取人を兼ねる場合、満期保険金請求権は保険契約の効力発生と同時に被相続人の固有財産となりますので、その後被相続人が死亡すれば相続財産となります。しかし、保険事故による保険金請求権は、保険契約者の意思を合理的に解釈すれば、相続人を受取人と指定する黙示の意思表示があったと解することが相当ですので、保険金請求権は相続人固有の財産となります。
遺産調査の段階で生命保険契約の存在が明らかとなった場合は、保険契約者、被保険者、保険金受取人が誰であるかをよく見極め、相続財産となるかどうかを判断しなければなりません。場合によっては、保険会社に照会して遺産分割の必要性についても協議しておく必要があります。
なお、生命保険金が相続財産に含まれない場合でも、非課税枠を超える生命保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象になりますし、特別受益に準じて持ち戻しの対象となる場合もありますので、注意してください。