債務整理・生活再建に関するサポート

昭和の終わり頃から始まったサラ金問題以降、司法書士は一貫して多重債務問題に取り組んできました。
平成22年の改正貸金業法の完全施行により、総量規制が導入されたことや、みなし弁済規定の廃止などにより、自己破産事件の件数は、しばらく減少傾向が続いていましたが、近年再び増加傾向を示しています。
また、一部債権者の任意整理手続における分割払い及び無利息の拒否、総量規制の及ばない銀行の無担保カードローンによる過剰融資、債権回収業者による時効にかかった債権の請求の問題なども目立ってきています。
住宅ローンや教育費等の負担増、勤め先の倒産やリストラ、生活費不足やクレジットカードの支払資金不足、そして返済のための更なる借入れなど借金の原因は様々ですが、借金問題は必ず法的に解決ができます。
しかし、債務整理は借金問題を単に解決することだけが目的というわけではなく、債務者が生活再建へ向かう第一歩を支援することであり、最終的には借り入れをする必要がない生活へのたて直しが目的です。
私たちは、借金で苦しむ皆さまからの相談を時間をかけて丁寧にお伺いしながら、向き合い、生活再建のために最も適した方法をアドバイスし、新たな人生の舵をきれるよう応援いたします。

債務整理・生活再建に関するサポート

主な相談事例Q&A

どの債務整理手続を選択すればいいのかわかりません

個人の債務整理手続には 大きく分けて3つの方法があります。「任意整理」、「自己破産手続」、「個人民事再生手続」の3つです。このうち、司法書士が代理人として行うことができるのは任意整理(ただし、紛争の目的の価額が140万円を超えない場合)のみで、自己破産手続や個人民事再生手続では書類作成者としてしか関われません。したがって、「自己破産手続」や「個人民事再生手続」を選択せざるを得ない場合には、ご自身が主体になって借金整理を進めていただく必要があります(とはいえ、司法書士は書類作成のみで、あとは放ったらかしではなく、依頼者が適切に手続きを遂行できるよう全面的にサポートしますのでご安心ください)。
そして、徹底的な債権調査と家計状況の調査等の結果、分割弁済により債務を完済できる見込みがあるのであれば任意整理、支払いをすることができないおそれがある場合には民事再生、もはや支払いをすることができないのであれば自己破産ということになります。それぞれの手続の概要は次のとおりです。
①任意整理
認定司法書士が、裁判所を介さずに、依頼者に代わって各債権者と個別に交渉し、債務残高を確定させて(利息制限法に定める利率を超えて支払っていた場合は、かなり金額が減ることやお金を取り戻せることもあります)、支払可能な毎月の支払額を合意して支払っていく方法です。
②自己破産手続
債務者の現在の収入では返済が難しいと判断される場合に、債務を免除してもらうことを目的とした、裁判所における手続です。破産開始決定および免責決定を得ると、養育費や税金などの非免責債権を除き、支払い義務を免れることができます。
③個人民事再生手続
継続的な収入を得る見込みがある債務者が、一定額を原則3年間で分割弁済することによって、残りの債務を免除してもらうことを目的とした、裁判所における手続です。
なお、この他に、簡易裁判所の調停委員が間に入り、債権者と債務者間で協議し、支払い可能な額を調整していく「特定調停手続」もあります。
分割返済の一つの目安としては、債務者の毎月の支払可能額(手取額から必要な生活費を控除した金額=1か月あたりの返済原資)を算出し、支払期間を原則3年間(36回払い)で計算し、債務総額が3年間分を超えれば、もはや支払いをすることができないといえます。
ただ、これはあくまでも目安であって、債務整理手続の選択においては「連帯保証人の有無」や「親族等の援助の有無」、「資格制限(警備員、保険外交員など)の有無」、「免責不許可事由の有無」、「家族や知人に内緒にしたい」、「住宅を絶対手放したくない」等さまざまな事情が絡み合います。決して機械的・技術的に決めていいものではありませんし、債務者の属性によって答えは一つとは限りません。したがって時間をじっくりかけて丁寧にすすめていく必要があります。

破産すると借金を返済しなくてよくなるのですか

個人の破産の場合、破産をしただけでは借金を返済する責任を免れることはできません。
免責許可の決定がされ、それが確定することではじめて、法律上返済する責任がなくなります。
ただし、免責許可の決定を受けても、租税等の請求権、不法行為に基づく損害賠償請求権、養育費を支払う義務などの非免責債権(破§253①Ⅰ~Ⅶ)については、法律上返済する責任を免れることはできません。
したがって、これらの債権をどのように弁済していくかを検討する必要があります。

免責が許可されないこともあるのでしょうか

免責不許可事由がある場合は、免責を得ることができません。
法定の免責不許可事由(破産§252Ⅰ)のうち、実際によく問題となるものとしては、次のようなものがあります。
・債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、他人への贈与等の行為を行った場合
・ローンやクレジットカードで商品を購入したうえで、その商品を廉価で売却して金銭に替えるなどの行為(いわゆる換金行為)をした場合
・偏頗弁済をした場合
・浪費(収入や財産の状態に比べて通常の程度を超えた支出をしたこと)や賭博その他の射幸行為(競馬、パチンコなどのギャンブルのほか、先物取引などのいわゆる投機を目的とする取引も含まれます)によって多額の債務を負った場合
・破産申立てをする前の1年間に、住所、氏名、年齢、年収等の経済的な信用にかかわる情報について詐術を用いたうえで借入れをしたり、クレジットカードで買物をするなどの行為をした場合
・裁判所に虚偽の書類を提出したり、虚偽の説明をした場合
・破産管財人の職務を妨害した場合
・破産の申立てをした日から数えて7年以内に免責を受けたことがある場合
もっとも、免責不許可事由が認められるからといって、免責許可の決定を受けることが絶対にできないわけではありません。裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して、不許可事由があっても免責を許可することがあります(裁量免責)。免責が不許可となる件数は、申立件数全体の約0.2%といわれ、多くの場合に免責許可が認められているといえます。
なお、著しい免責不許可事由が存在することを理由として管財事件となる運用が多くの裁判所で行われています。

自己破産のデメリットを教えてください

破産手続には以下のようなデメリットがあげられます。
・生活必需品以外の財産(持家、自動車、生命保険など)は、原則として失うことになります
・保証人がいる場合、破産者の代わりに保証人に請求されてしまいます
・職業制限があります(生命保険の外交員や警備員など)
・引越をする際は、原則として裁判所からの許可を得なければなりません
・債務整理手続に共通するデメリットですが、信用情報に登録されて、今後数年間は借入れやクレジットカードの作成が難しくなります
・官報に、住所や氏名等が記載されます
一般の方は、破産すると戸籍に記載される、選挙権が無くなる、家族・親族の将来に影響を及ぼす、身の回りの人に知られてしまう、身ぐるみはがされて生活する場所を失う、など誤ったイメージを持っている方が少なくありません。
また、破産が原因で会社を解雇されることもありませんし、会社が債権者でない限り、会社に知られることは通常ありません。詳しくはこちらをご覧ください。

持ち家を手放さずに債務整理をすることはできますか?

自己破産手続の場合、免責許可の決定を受ければ、租税等の請求権等を除き、原則としてすべての債務を免れることができます。そのかわりに破産者の所有している財産を清算して債権者への返済にあてなければなりません。

持ち家を手放さずに債務整理をする方法としては、まず、任意整理をする方法が考えられます。借金総額を、原則3年間で分割返済できれば、持ち家を手放さずに済みますし、毎月の返済可能額で分割返済しきれない場合は、親族などに家を買ってもらい、売買代金を借金の返済にあてて、自身は元の家を借りて住み続けることも考えられます。

もう1つの方法としては、個人民事再生の手続があります。個人民事再生とは、支払不能に陥るおそれが生じるに至ったものの、継続的な収入の見込みがあり、総債務額が5000万円以下の個人債務者を対象にして、一定額を原則3年間で分割弁済することによって、残りの債務を免除してもらうことを目的とした、裁判所における手続です。

民事再生の手続を選択した場合、現在所有している財産は、原則、すべて保有したまま手続ができます(別除権(抵当権や所有権留保など)に基づき個別の財産が処分されることはあります)。
ただし、再生計画が認可されるためには、所有している財産の総価額以上の支払いをすることが要件となっています。これを清算価値保障の原則といいます。
清算価値とは、現在所有する財産をすべてお金に換価した場合のその総額のことです。つまり、持ち家の処分価値が高額になると、その分支払総額が増加することになります。

また、個人民事再生の手続には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの種類がありますが、「給与所得者等再生」の場合、2年分の可処分所得(1年分の収入から、税金や保険料、申立人とその扶養者の生活に必要な経費を控除したもの)以上の支払いをすることも要件となっています。お一人暮らしの方や扶養家族がいない方などの場合は、可処分所得が大きい額になるため、「小規模個人再生」を選択した場合と比べて支払総額が相当大きくなることが予想されます。

これに加えて、最低弁済額(債務総額の5分の1(基準債権が1500万円を超え3000万円以下の場合には300万円。3000万円を超える場合は10分の1)または100万円以上)が定められており、「小規模個人再生」の場合は最低弁済額、清算価値のうちいずれか大きい額、「給与所得者等再生」の場合は上記の額に加え、可処分所得のうちいずれか大きい額を返済することが求められます。

つまり、資産の総額が高額になる場合や可処分所得が大きくなる場合には、裁判所に確実にその金額の支払いができると判断されなければなりません。したがって、持ち家がある場合の選択方法として、必ずしも民事再生が適しているとは一概には言えません。

また、住宅資金特別条項を利用することによって、住宅ローンの支払いを続けながら、その他の債務を圧縮することにより、持ち家を保有し続けることができる点も民事再生手続きの大きな特徴ではありますが、住宅資金特別条項を設けるには厳しい要件がありますのでご注意ください。

連帯保証人がいる場合の債務整理の方法とは

連帯保証人がいる場合、どのような債務整理手続をとるにせよ、受任通知による取立禁止の効力は連帯保証人には及びません。したがって、主債務者が債務整理手続に着手した場合、債権者から連帯保証人に請求されることが予想されます。

また、保証債務には附従性があり、主債務が一部免除されれば保証債務も主債務の限度に縮減されるのが原則ですが、破産や民事再生においては、その原則が否定され、支払不能部分については連帯保証人に全額請求が及ぶことになります。

一方、任意整理においては、原則どおり保証債務は主債務の限度まで縮減されます。したがって、破産や民事再生を選択せざるを得ない場合には、連帯保証人の支払能力に応じて保証人についても何らかの法的債務整理を検討する必要があります。

連帯保証人がいる場合、保証人に迷惑を掛けたくないと考えて債務整理を躊躇う方が多いですが、このまま事態を放置していると負債がもっと大きくなり、保証人に対して後日もっと迷惑をかけることになることをご理解ください。