不動産登記に関するサポート

 不動産登記は、登記官や司法書士の間では『権利の登記』と呼ばれています。すなわち、登記することを義務づけているわけではありません(ただし、令和6年4月1日から相続登記、令和8年からは住所変更登記等の義務化が始まる予定です)。
 しかし、不動産に対する権利を守る(第三者に主張する)ためには、登記は必須です。「不動産の売買」や「信託」など、不動産は登記をすることによって権利が守られるのです。
 私たちは、不動産登記の専門家として、登記申請手続に迅速に対応し、皆さまの大切な財産をお守りします。

不動産登記に関するサポート

主な相談事例Q&A

抵当権設定登記以外の方法で債権保全を図りたいのですが、どのような方法がありますか?

債務不履行に備えてあらかじめ不動産の所有権を債権者に移転しておく担保制度があります。これを「譲渡担保」といいます。
本来であれば、抵当権設定登記をして債権保全を図るべき事案にもかかわらず、譲渡担保を原因として所有権移転登記をする理由は、抵当権のように競売申し立てをすることなく帰属清算をすることができるメリットがあるためです。
譲渡担保による所有権移転登記は、形式上は譲渡ですが、実体的には担保権です。債務者が使用収益を継続していること、債務者が相当額の利息等を債権者に支払っていること、あくまで債権担保のみを目的として形式的にされたものであること等を契約書上明らかにすることで、譲渡所得税や不動産取得税などの税制面のメリットがあるため利用されているようです。
なお、そのほかにも仮登記担保法1条に定義される、金銭債権担保を目的とする担保仮登記があり、代物弁済予約による所有権移転請求権仮登記または条件付所有権移転仮登記をする方法も利用されています。


 

ペアローンで購入した居住用不動産を財産分与したい

ペアローンは夫婦それぞれ別々の住宅ローンを組みます。つまり、同一物件に対して生計を一にする複数の債務者がそれぞれローン契約を結び、お互いに連帯保証人になる借り入れ方法です。同じ1軒の家を建てるために2つの住宅ローンを組むということです。住宅ローンが別々のものであるため、夫婦が各自それぞれの住宅ローンに対して債務を負います。
借入額を増やすことができ、住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)などのメリットをそれぞれ受けることが可能なため、現在では多くの金融機関でペアローンを扱っています。この場合、同順位で抵当権の設定登記がされていることが多いです。
ペアローンで購入した居住用不動産を財産分与するには、離婚時の最大の障壁といってよいでしょう。抵当権が付されている以上、簡単に夫の持分を妻に移転することはできません。住宅ローンの金銭消費貸借契約における特約条項には、金融機関の承諾なく所有権の名義を移転した場合に、債務の一括返済を求める旨の約定がなされている場合も少なくないからです。
この場合によくとられる方法は、融資銀行または新たな金融機関において借換をするケースです。新たに融資を受けて、夫と妻の古い抵当権を抹消して、夫の持分を妻に移転し、妻単独債務の新しい抵当権を設定するやり方です。
ここでのポイントは、新たに融資(借換)の審査が通るかどうかになります。妻に返済能力がなければ住宅ローンを組むことは難しくなります。この場合、妻が履行引受をする方法(ただし、夫名義の住宅ローンが完済するまで財産分与による移転登記はできません)、妻の親族等に連帯保証人になってもらう方法、妻の親族等が資金援助をする方法など様々な方法がありますが、いずれにしろ金融機関との事前協議は欠かせません。
なお、協議により財産分与が成立した場合、登記原因及びその日付は離婚届の届出日、届出日後に協議が成立したときは協議の日をもって「財産分与」とします。
家庭裁判所の調停・審判により財産分与が成立した場合は、調停の成立した日・審判の確定した日付で「財産分与」とします。このとき、調停調書、審判の主文に登記を命ずる旨の条項があれば、妻からの単独申請が可能ですが、なければ共同申請になってしまいますので注意してください。



借地上の建物を売却する場合に注意することはありますか?

まず、一つ目の注意点は、借地権付建物を第三者に譲渡する場合は、地主の承諾が必要になることです(借地権が賃借権である場合。地上権である場合は不要です)。地主の承諾を欠く譲渡は契約の解除事由となります。そして、借地権の譲渡の場面では特約により名義書換料を支払うとするのが一般的です。
もし、地主が賃借権の譲渡を承諾しない場合は、地主の承諾に代わる裁判所の許可(借地借家§19Ⅰ)を得る必要があります。なお、借地権付建物の所有権移転登記の申請にあたり、地主の承諾に係る書面等は必要書類に含まれていません。
次に、買主側の注意点ですが、借地権付建物を売買により取得した場合、その所有権移転登記は必ず行ってください。借地権については、その登記があれば借地権を主張することができますが、借地権が賃借権である場合、地主に登記に協力する義務がないことから、土地賃借権の登記が行われることは稀です。しかし、借地上に自己所有名義の登記のある建物があれば、その土地を取得した第三者に対しても借地権を主張できます。つまり、将来、地主が第三者に土地を売却し、新しい地主が土地の明け渡しを求めてきたとしても、それを拒むことができます。この建物の名義ですが、土地の賃借人と同一人物の名義であることが必要とされています。例えば、夫が土地の賃借人である場合、建物の名義が妻になっているときは、夫は借地権を第三者に主張できないことになりますので注意が必要です。
最後に、借地権付建物の売買代金についての注意点があります。通常、借地権付建物の売買が行われる場合は、売買代金に建物価額のほかに借地権相当額が含まれています。しかし、この借地権相当額が含まれていない場合、建物の買主が個人であるときは、原則としてその価額相当の贈与を受けたことになり、課税上の問題が生じるおそれがあります。

権利証を紛失しました。どうすればいいですか?

不動産を売却し所有権移転登記手続をするには、登記義務者(売主)の権利証(登記済証または登記識別情報通知)が必要です。
しかし、権利証を失くしてしまった場合、権利証の再発行はしてもらえません。
では、権利証を失くしてしまった場合、どのような方法で所有権移転登記手続をすればいいのでしょうか?
この場合、不動産登記法や不動産登記規則には、次のような三つの方法が定められています。
まず、一つめは『事前通知』という方法です。これは、登記済証の提出または登記識別情報の提供なしに所有権移転登記の申請があった場合、法務局から登記義務者(売主)に対し、「所有権移転登記の申請がありましたが、そのとおり間違いありませんか?」という通知がされ、通知を発してから2週間以内に、登記義務者から「そのとおり間違いありません」という申出があれば、登記が受理されるというものです。この事前通知の利用には、特段費用はかかりません。
二つめは『公証人の認証』による方法です。これは、公証人が登記申請書等の書面に認証をする方法です。通常は、司法書士に対する登記委任状に登記義務者(売主)が署名押印し、それを公証人が認証する形が多いです。認証の際には、印鑑登録証明書(発行から3か月以内)と本人確認資料(顔写真付きの公的機関が発行する証明書。例えば、運転免許証、マイナンバーカード等)が必要です。なお、この委任状の認証の手数料は3,500円です。
三つめは資格者代理人の作成による『本人確認情報』を提供する方法です。これは、登記の申請の代理を業とすることができる者=資格者代理人(司法書士や弁護士)が、直接登記義務者(売主)と面談し、本人確認資料(顔写真付きの公的機関が発行する証明書。例えば、運転免許証、マイナンバーカード等)の提示を受けて、登記義務者であることを確認し、本人に間違いない旨の書面(本人確認情報)を作成し、登記所に提出する方法です。
この登記義務者(売主)との面談については、直接ご本人と対面することが必要で、電話での確認で済ますことはできません。また、登記義務者が、所有権移転申請日(=決済日)前3か月以内に登記義務者の住所について変更(更正)の登記を行っているときは、当該登記義務者の登記記録上の前の住所に宛ててハガキを出します(これを『前住所通知』といいます)。そのハガキが「宛所にたずねあたりません」と返送されれば、本人確認は終了です。
以上、権利証を失くしてしまった場合に権利の登記をする方法として3つの方法をご紹介しましたが、一般的に利用されているのは三つめの資格者代理人の作成による『本人確認情報』を提供する方法です。なお、司法書士による本人確認情報の作成料としては、事務所によってまちまちですが、5~10万円前後が相場なのではないかと思われます。

名義を共有とすべきところ、私の単独名義にしてしまったため、正しい割合に改めたい

所有権の更正の依頼は2月末から3月に多いようです。この時期は、確定申告の時期ですね。
例えば、夫婦が半分ずつ資金を出し合って不動産を購入したのに、夫単独の名義にしてしまった場合、税務署から、妻からの贈与と指摘され贈与税を課税されそうになったりします。そこで、あわてて「妻の持分を入れて欲しい」と依頼が来るのです。
しかし、この場合、所有権更正登記(単有→共有、共有→単有など正しい割合に改める登記がその代表です)をするのは難しいです。
所有権更正登記については、登記上の利害関係を有する第三者がいれば、その者の承諾のない限り登記は受理されません。「登記上の利害関係を有する第三者」とは、申請人が申請しようとしている登記が実行されたとすると、損害を被るおそれがあり、そのおそれのあることが既存の登記記録から形式的に認定することができる申請人以外の第三者をいいます。
例えば、不動産の購入に際して担保権が設定されていた場合、金融機関の承諾が必要になります。更正登記をすると、金融機関の担保権の目的は所有権の一部(更正登記前の夫の持分)に縮減されるためです。したがって、その承諾を得る可能性は皆無に近いです。
また、所有権更正登記をするにあたっては、前登記名義人(売主)に、もう一度権利証と印鑑証明書を提供してもらう必要がありますので、こちらも難航しそうです。
そこで、このような場合は「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権一部移転登記をすることがよく行われています。登録免許税は更正登記をする場合と比べて高くなりますが、所有権移転登記であれば登記上の利害関係を有する第三者はいませんし、前登記名義人に頼み込む必要もありません。
これに対して、もともと妻の持分が少しでも入っていれば違った結果になっていました。なぜなら、持分のみの更正登記でよいからです。したがって、上記2つの関門(金融機関、前登記名義人の協力の必要性)がありません。登録免許税も不動産1個につき1000円で、所有権更正登記をすることができます。