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債務整理・生活再建のこと

自己破産のデメリットとは

1 財産の管理処分権の喪失

破産手続開始決定後、破産者の財産の管理処分権は全て破産管財人に専属し(破§78)、破産者は自由に財産を処分することができなくなります。

ただし、99万円までの現金や、生活に欠くことができない衣服・家具等の自由財産(破§34Ⅲ、民執§131等)は、破産手続開始後も、破産者が自由に使用することができます。

2 信用情報機関への登録

破産者が破産開始決定を受けたことは、債権者を通じて信用情報機関(JICC、CIC、KCS等)に登録されます。信用情報機関とは、加盟する会員会社から登録される信用情報を管理・提供する機関で、延滞や代位弁済、破産などの事故情報を保管しています。いわゆる「ブラックリストに載る」とは、「信用情報機関に事故情報が掲載されること」と言ってよいでしょう。

前記いずれの信用情報機関でも、支払状況を表す情報は契約終了後5年間保有されます。そのため、貸金業者等は信用情報機関に確認をすることで、最低5年間は、破産した事実や延滞した事実を知ることができます。

なお、KCSは、官報情報(すなわち、破産開始決定を受けた記録)を10年間保管しているので、注意が必要です。

3 資格の喪失

特定の資格においては、「破産者であって復権を得ない者」が欠格事由とされており、破産により、従前有していた資格を喪失してしまうことがあります。

例えば、弁護士等の士業、警備員、証券外交員、NPO法人の役員などです。他にも、委任契約は破産により終了することから、株式会社の取締役が、破産後もなお取締役で居続けることはできません(再度、取締役として選任し直してもらうことは可能です)。

4 官報に掲載

裁判所は、破産手続開始決定をしたとき、破産者の氏名、住所や破産手続が開始したこと等を官報に掲載します。また、知れている債権者には、個別に通知をしなければなりません(破§32Ⅲ)。

しかし、その範囲を超えて「破産したこと」が周知されるわけではありませんから、官報を都度確認していない限り、職場や友人、近隣の住民らに破産した事実が伝わることは基本的にありません。

ただし、裁判所は、申立ての際に世帯全体の「家計の状況」の提出を求めていますから、手続を円滑に進めるためには家族の協力が不可欠です。また、生活状況等について、破産管財人が家族に事情聴取を行うことも考えられます。そのため、家族に破産を知られずに手続を進めることは難しいでしょう。

5 保証人に対する影響

受任通知による取立禁止の効力は、保証人には及びません。したがって、主債務者が破産手続開始申立準備に着手した場合、債権者から保証人へ請求がなされることが予想されます。

保証債務には付従性があり、主債務が免除または一部免除されれば保証債務も主債務の限度に縮減されるのが原則です(民§448)が、免責によって主債務者の債務の支払義務がなくなったとしても、その効力は保証債務には影響を及ぼしません(民§253Ⅱ)。

6 転居・旅行の制限

破産者は、破産手続開始決定から破産廃止・破産手続終結までは裁判所の許可を得なければその居住地を離れることができません(破§37Ⅰ)。したがって、転居や旅行をする場合には裁判所の許可を必要とします。これは、破産者が逃走をしたり財産の隠匿を防止するためであるといわれています。

なお、破産手続開始決定と同時に破産手続が廃止された場合には、実質的には転居・旅行の制限を受けることはありません。

7 郵便物の転送

破産手続開始決定があると、裁判所は、破産者に宛てた郵便物または信書便等を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができるとされています(破§81Ⅰ)。破産管財人は、破産者に宛てた郵便物を受け取ったときは、これを開いてみることができます(破§82Ⅰ)。

これらは、破産者宛てに配達される郵便物等を通じて財産の存在や隠匿行為を発見するために行われるものです。したがって、破産手続開始決定と同時に破産手続が廃止された場合には、郵便物等が上記のような取扱いを受けることはありません。