どの債務整理手続を選択すればいいのか迷う場合が多くあるのではないかと思います。ここでは、各手続きを選択する判断材料として、それぞれのメリット・デメリットをまとめてみましたのでご参考になれば幸いです。
1 自己破産
(1)自己破産のメリット
・免責により特定の債務を除き支払を免れることができる
・支払原資の有無を心配する必要がない
・免責許可申立後の破産手続廃止決定により、給与差押等の強制執行手続きが中止される
(2)自己破産のデメリット
・資格制限がある
・官報に掲載される
・住宅、自動車、保険などの資産を処分しなければならない
・免責不許可事由が法定されている(ただし、裁量免責の可能性はある)
・保証人がいる場合、保証人が債権者から保証債務についての追及を受けることになる
・管財事件になった場合、予納金が高額になる可能性がある
2 個人民事再生
(1)個人民事再生のメリット
・資格制限がない
・住宅資金特別条項を利用できれば、住宅を残すことができる
・債務総額によるが、返済総額を約8割程度カットできる
・免責不許可事由は問わない
・債権者全員の同意は不要
・再生手続開始申立により、給与差押等の強制執行手続きが中止される
(2)個人民事再生のデメリット
・債務者に安定した収入が必要となる
・申立から再生計画の認可まで約6カ月間要し、その間も決められた時期に所定の書面を提出しなければならないなど、時間と労力がかかる
・東京地裁では全件個人再生委員が選任され、同委員の報酬金15万円が発生する
・債権者数の半数以上が再生計画案に書面で反対した場合には実現できない(小規模個人再生)
・債権総額の半分を超える部分に相当する債権者が再生計画案に書面で反対した場合には実現できない(小規模個人再生)
・可処分所得の2年分の額を下回れない(給与所得者等再生)
・債権者間の形式的平等が要求され、一部債権について一括返済にしたり支払期限を延長するなどの融通が利かない
3 任意整理
(1)任意整理のメリット
・法的手続ではないので簡易かつ弾力的な和解契約が可能
・早期に決着がつく
・裁判費用がかからない
・資格制限を回避できる
・免責不許可事由があっても利用できる
・自宅等の財産を保持できる
・任意整理手続きと並行して過払金を裁判上または裁判外を問わず請求できる
・対象とする借入先を選択することができる
・任意整理における和解契約は債務名義にならない
・遅延損害金の一律カットの交渉も可能
(2)任意整理のデメリット
・利息制限法で引き直した残金は支払いが続く
・元本等の減額は基本的には難しい
・貸金業者によっては分割払いを一切認めない、または短期間(1年以内や3回程度など)しか応じない ところがある
・通常支払期間が長期に及ぶので、途中で挫折する事例も少なくない。その場合の破産手続移行は2度手間となる
4 特定調停
(1)特定調停のメリット
・民事執行停止の申立てが担保なしで受けられる余地がある
・取引開示請求が、調停委員会から行われる
・利息制限法に基づく引直計算を調停委員が行う
・取引開示に応じない業者に対し、調停委員会は文書提出命令を発令することができる
(2)特定調停のデメリット
・特定調停では、期限の利益喪失後、調停成立時までの遅延損害金を債権額として認定する取扱いが多く行われている
・特定調停において過払金を回収することは一般的に行われていない
・調停調書の内容は債務名義になるため、履行遅滞に陥った場合、直ちに強制執行されるおそれがある
・調停期日に出頭する時間を取られ、調停成立までに最低2カ月程度の時間がかかる