1 強制執行の要件
公正証書を、裁判の確定判決などと同様に、債務名義として強制執行するには、次の要件が必要です。
①金銭の一定の額の支払(又はその他の代替物や有価証券の一定の数量の給付)を目的とする請求についての公正証書であること。
②債務者・連帯保証人等が債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服するとの陳述(強制執行認諾文言)があること。
さらに、裁判所に強制執行の申立てをする前に、公証役場で「送達証明書」の交付と「執行文の付与」を受ける必要があります。
「送達証明書」とは、公正証書正本又は謄本が強制執行を受ける相手方に届いていることを証明する文書のことです。
2 郵便送達と交付送達
公証役場に対して「送達証明書」の交付を受ける方法としては、『郵便送達』と『交付送達』の2つの方法があります。
『郵便送達』は、債務者等に対し、公証人が公正証書正本又は謄本等を郵送で送付する方法です。
一方、『交付送達』とは、公正証書作成の際に債務者等が公証役場に出頭した際に、公証人がその場で公正証書正本又は謄本等を直接手渡す方法です。
一般的に、債務者等は公正証書の作成には素直に応じることが多いのですが、弁済期を経過して支払いの督促を受ける頃になると、一転して開き直ってみたり、いろいろ自分勝手な言い分で請求の回避を画策するものです。
将来、不払いになってから公正証書を送達しようにも、債務者等が受取りを拒否したり、行方不明になったりすることもありえますので、『郵便送達』の方法で送達証明書を取得しようとしても、これが困難になることが少なくありません。
そこで、このような困難を回避するためにも、公正証書を作成したときは、その場で送達申請をして『交付送達』の方法で送達証明書を取得しておくべきです。
ただし、『交付送達』の方法は、当日に債務者等が同席する場合に限り可能ですのでご注意ください。