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不動産のこと

自分でできる抵当権抹消登記①~最新の登記簿謄本を取得してみましょう~

1 住宅ローンの完済、お疲れ様でした!

 住宅ローンを完済された皆様。長い間、本当にお疲れ様でした。漸く、月々の返済から解放されて、安堵なされていることだろうと思います。まだまだ、ご子息の教育費用やご両親の介護費用など、肩にのしかかってくる重荷は尽きませんが、ひとまずお疲れ様でした、と言わせてください。

2 抹消書類はお手元にありますか?

 さて、住宅ローンを完済された方々には、お借入先の金融機関から担保権抹消登記手続のご案内書類一式がご自宅に郵送されてきたか、または直接手渡しされたのではないかと思います。

 送付状には、専門家(司法書士)に委ねることをお勧めするような案内が書かれているかと思いますが、せっかく苦労して完済したのですから、ここはご自身で抹消登記にトライしてみてはいかがでしょうか。

 早めに抹消登記をせずに、このまま放置しておくと、後々、余計な手間が増えることにもなりますので、なるべく速やかにご自身で抹消登記を完了しておいた方がいいと思います。以下に、ご自身でもできる抹消登記手続をご紹介いたしますので、どうぞご参考になさってください。

 ただし、以下で説明する抵当権抹消登記手続は、ごく簡単な事例を挙げて説明するにとどめます。抵当権抹消登記は、意外に奥が深いですから、一般の方が手に負えないような場合(後述します)は、迷わず専門家(司法書士)を頼ってください。

3 弊所にご依頼いただいた場合の料金(概算)

 ちなみに、弊所にご依頼いただいた場合の報酬+費用をご参考に掲げておきます。

例)ご自宅の土地1筆、建物1棟(不動産が2個)を目的とする抵当権を抹消する場合

司法書士報酬(〈基本報酬9,000円+筆数加算1,000円+事前閲覧800円+謄本取得1,500円〉×消費税)+郵送費(約1,560円)+事前閲覧費用(668円)+謄本取得費用(1,200円)+登録免許税(2,000円) = 約18,958円
 
※なお、事案の難易度によって基本報酬が若干増額することがあります。また、場合によっては、交通費や郵送費などの実費も若干増額することがありますのであらかじめご了承ください。もちろん、事前にその旨はお伝えさせていただきます。

 下記の手続がご面倒とお感じになられた方や多忙で手続をしている暇がないという方は、どうぞご依頼ください。お待ちしております。

4 まずは、登記事項証明書の確認から

 さて、手続に入る前に事前に確認していただきたいことがあります。それは、最新の「全部事項証明書(登記簿謄本)」を取得してほしいのです。登記簿謄本は、ご存知かもしれませんが、全国どこの法務局(登記所)でも取ることができます。ですので、ご自宅または勤務先の最寄りの登記所に足を運んで、取ってみてください。その際には、「共同担保目録」付で必ず取るようにしてください。

 通常、金融機関から送られてきた封筒の中に、抵当権設定当時の「全部事項証明書(登記簿謄本)」が入っているはずですから、それを持って、登記所に行きましょう。謄本取得のための用紙は備え付けてあります。記載方法がわからなければ、直接窓口で尋ねてもいいですし、それでもわからなければ、設定当時の謄本を見せて、「これの最新のものをください」と言えば、書き方を教えてもらえるはずです。その際には、共同担保目録付きで欲しい旨をちゃんと伝えるようにしてください。

5 登記簿の見方

 さて、登記簿には3つの『大きな枠』があります。それは、「表題部」、「権利部(甲区)」、「権利部(乙区)」です。甲区には所有権に関する事項が、乙区には所有権以外の権利に関する事項が載っています。他にも「共同担保目録」や「信託目録」などの大きな枠もあります。

 例えば、中古の戸建て住宅を購入された方の場合は、土地及び建物の甲区(所有権に関する事項)欄に以下の『小さな枠』を見つけることができるはずです。

【権利部(甲 区) (所有権に関する事項)】

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
所有権移転平成〇年〇〇月〇〇日
第〇〇〇〇号
原因 平成〇年〇〇月〇〇日売買
所有者 横浜市神奈川区〇〇一丁目〇番〇号
    山 田 太 郎

 また、建売住宅や注文住宅を購入された方の場合は、建物の甲区(所有権に関する事項)欄に以下の『小さな枠』を見つけることができるはずです。

【権利部(甲 区) (所有権に関する事項)】

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
所有権保存平成〇年〇〇月〇〇日
第〇〇〇〇号
所有者 横浜市神奈川区〇〇一丁目〇番〇号
    山 田 太 郎

まずは、以上の枠が抵当権設定当時の小さな枠と変化がないことをお確かめください。

次に、乙区(所有権以外の権利に関する事項)欄に以下の小さな枠があること、及びそれが抵当権設定当時と変化がないことをご確認ください。

【権利部(乙 区) (所有権以外の権利に関する事項)】

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
抵当権設定平成〇年〇〇月〇〇日
第〇〇〇〇号
原因 平成〇年〇〇月〇〇日保証委託契約による求償債権平成〇年〇〇月〇〇日設定
債権額 金3,000万円
損害金 年14%(年365日日割計算)
債務者 横浜市神奈川区〇〇一丁目〇番〇号
    山 田 太 郎
抵当権者 東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号
    〇〇〇〇信用保証株式会社
共同担保 目録(▢)第〇〇〇〇号

 最後に、共同担保目録も確認しておきましょう。通常、住宅ローンを組んでご自宅を購入された場合は、ほぼ司法書士が関与しているはずですから、金融機関から送られてきた抵当権設定当時の登記簿謄本にも共同担保目録付きで取っているはずですから、変化がないことを確かめておいてください。

【共同担保目録】

記号及び番号(▢)第〇〇〇〇号調製平成〇年〇〇月〇〇日
番 号担保の目的である権利の表示順位番号予  備
1横浜市神奈川区〇〇一丁目3番5の土地
2横浜市神奈川区〇〇一丁目3番地5
家屋番号 3番5の建物

 ただし、ご自宅の前面道路が私道である場合があります。その場合、私道は共有になっているか、またはその1区画だけ所有しているか、どちらかだと思いますが、前者の場合の私道部分の甲区(所有権に関する事項)、乙区(所有権以外の権利に関する事項)、共同担保目録の記載は以下のようになっているのではないでしょうか。

【権利部(甲 区) (所有権に関する事項)】

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
〇〇〇〇持分全部移転平成〇年〇〇月〇〇日
第〇〇〇〇号
原因 平成〇年〇〇月〇〇日売買
共有者 横浜市神奈川区〇〇一丁目〇番〇号
    持分〇分の〇  山 田 太 郎

【権利部(乙 区) (所有権以外の権利に関する事項)】

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
〇〇〇〇持分
抵当権設定
平成〇年〇〇月〇〇日
第〇〇〇〇号
原因 平成〇年〇〇月〇〇日保証委託契約による求償債権平成〇年〇〇月〇〇日設定
債権額 金3,000万円
損害金 年14%(年365日日割計算)
債務者 横浜市神奈川区〇〇一丁目〇番〇号
    山 田 太 郎
抵当権者 東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号
    〇〇〇〇信用保証株式会社
共同担保 目録(▢)第〇〇〇〇号

【共同担保目録】

記号及び番号(▢)第〇〇〇〇号調製平成〇年〇〇月〇〇日
番 号担保の目的である権利の表示順位番号予  備
横浜市神奈川区〇〇一丁目3番5の土地
横浜市神奈川区〇〇一丁目3番7の土地
〇〇〇〇持分
横浜市神奈川区〇〇一丁目3番地5
家屋番号 3番5の建物

 甲区欄の登記の目的が、「共有者全員持分全部移転」になっているかもしれませんが、その他はほぼ上記のようになっているのではないでしょうか。

 なお、一般の方は、この私道の持分を所有している意識が薄いので、抹消登記の対象から漏れる可能性があります。漏れに気づかないで登記の申請をしてしまうと、私道の部分だけ抵当権の登記が残ってしまったり、共同担保目録も全部抹消されずに残ることにもなりかねません。ですので、登記簿謄本を取るときは、必ず共同担保目録付きで取り、担保に入っている物件を確認してから申請することが大切です。

6 表題部の見方

 ところで、先ほど申しあげたとおり、登記簿には3つの『大きな枠』があり、「権利部(甲区)」、「権利部(乙区)」とともに「表題部」があるという話をしましたが、ここで「表題部」の見方もお話しておきます。登記原因証明情報(後述)や登記申請書に「不動産の表示」を記載する際に、大変重要な部分になってきます。

 といっても、見るべきところはそれほど多くはありません。土地であれば「所在」、「①地番」、「②地目」、「③地積」、建物であれば「所在」「家屋番号」「①種類」「②構造」「③床面積」の欄だけです。

 もっとも、これが敷地権付区分所有建物である場合は、もっと多くなります。敷地権付きのマンション等は、そもそも表題部の枠が4つあります。『表題部(一棟の建物の表示)』、『表題部(敷地権の目的である土地の表示)』、『表題部(専有部分の建物の表示)』、『表題部(敷地権の表示)』の4つです。

 見るべきところは、まず、『表題部(一棟の建物の表示)』であれば「所在」、「建物の名称」(名称は登記されていない場合もあります)、『表題部(敷地権の目的である土地の表示)』であれば「①土地の符号」、「②所在及び地番」、「③地目」、「④地積」、『表題部(専有部分の建物の表示)』であれば「家屋番号」、「建物の名称」、「①種類」、「構造」、「床面積」、『表題部(敷地権の表示)』であれば「①土地の符号」、「②敷地権の種類」、「③敷地権の割合」の欄です。

 登記原因証明情報や登記申請書に記載する「不動産の表示」の書き方は、追って説明します。

 続いて、金融機関から送られてきた書類一式の中から、抵当権抹消登記に必要な書類を確認していくこととしましょう。